『音の神秘』ー ハズラト・イナーヤト・ハーン
先日届いた、ランディ・ウエストンの新アルバムを開き、まず目に飛び込んできたのは、ハズラト・イナーヤト・ハーンという名前だった。
彼の残した名著、その名も『音の神秘』こそが、私とランディをさらに深く結びつけ、2008年に彼を追いかけて、モロッコへとまで旅立つ要因となったものだった。
ジャケットに引用として掲げられてあるハーンの言葉、
「音の神秘を知る者は、この宇宙全体の秘密をも、理解するようになる。」
2008年、世界遺産でもある京都・上賀茂神社での素晴らしいランディ・ウエストンのコンサートが開催された。主催はラッシュライフという老舗のジャズ喫茶。そこに集まる仲間たちが、すべて手作りで、ランディの音楽を聞きたいという熱意だけでつくりあげた、心温まる、しかも驚異的な、コンサートだった。
その際、数時間に渡り、ランディと二人だけで、深くお話する機会があった。音楽、芸術、精神性、多岐にわたる胸躍るような会話の中でも、とりわけ印象深かったのが、この『音の神秘』についての対話だった。
信じられない話しだが、何とニューヨークの道路にたまたま落ちていた(笑!)この本を、ランディの親しい友人が見つけ、これはランディに渡すべきだと思い立ち、プレゼントされたのだとのこと。
しかもその本の書かれている内容に、彼は一生深く、影響をうけることとなるのだった。。
『自由こそ魂の本質であり、魂にとって生のこのすべての悲劇は、この自由の欠如であるということ。』
『世界は音楽によって創造され、音楽によって再びそれをまた創造した源へと帰っていくのです。』
ー「音の神秘」より ハズラト・イナーヤト・ハーン著 土取利行訳 平河出出版
今再びこの本を開いてみて、ページのあらゆるところに、心に深く響いて来る言葉が、きらめいている。
そしてもう一つ、この時の対話の中で、痺れるような興奮を覚えたのが、ランディのモロッコ体験だった。
『音の神秘』そしてランディが語る、モロッコでの音楽体験。
そして私のそれまでの、人生の、いのちの探求としての創作活動。
私の中で、この三つが奇蹟のように合わさり、私は急遽、モロッコへと導かれて行ったのだった。